ライフステージと個室のプランニング

建て主様とのプランニングの打合せで、個室の設えについての考え方をよくたずねられます。
先日の打合せでのお話しを、お伝えしたいと思います。

個室は、子供の勉強部屋として使われたり、夫婦の寝室となったり、場合によっては高齢者の介護場所ともなります。ライフステージによって、求められる設えや必要とされる環境が大きく異なってくるので、個室の配置や大きさをどのように設定するかは、難しい問題です。ある時期に特化しすぎた設えとすると、後々使いにくい部屋となりかねません。時間軸を組み込んで、部屋のあり方を考えていきましょう。

1.子ども部屋
乳幼児のときには両親と同室で就寝していても、小学校への就学前後から子ども部屋を与えるという例が多いようです。これは独立心を育むことが目されてのことだと思います。一方、思春期になると、対外的なつながりをうまく構築できず部屋に引きこもってしまうこともあります。そこで子ども部屋となる個室の面積を小さく設定しておき、中に引きこもりにくくするという発想もあります。
専有する個室空間をベッド置き場など最小限として、勉強机はオープンな共用空間内に設けておき、必要とするプライバシー確保しつつ、コミュニケーションを生み出していくというものです。

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また、子どもが巣立った後の子ども部屋の使われ方も想定しておきたいものですが、最近では「パラサイト・シングル」と称されるように、社会人になった後も親元で生活をするケースもあります。さらに、晩婚化によって、その期間が在学期間より長くなることもあります。そうなると、子ども部屋といいつつも成人が生活する部屋となり、狭小な面積では不都合を起こします。そういった事態になっても大丈夫なように、逆に面積的に余裕のある子ども部屋(もはや子ども部屋とは呼ばないかもしれません)としておく考え方もあるでしょう。

2.夫婦の寝室
夫婦の寝室となる個室は、日中に用いられることが少なければ、陽当たりの条件が不利な位置に配することも選択肢となります。また、夫婦の寝室は、特にプライバシーに配慮をしなくてはいけません。さらに、夫婦が清潔に保つことができるように、水まわりとの位置関係も考えておきましょう。見落とされがちでありますが、夫婦の寝室からシャワーや洗浄便座付きのトイレまで、家族の目を気にせずにアクセスできるルートを確保しておくことは大切な配慮事項です。欧米では主寝室に付属して水まわりが設けられている例が多いです。病気の予防という意味でも有用であります。

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3.高齢者の寝室
高齢期になったときの寝室(特定寝室)をどこに設けるかを想定しておくことも重要となります。高齢期にはトイレが近くなる頻尿という現象もおきてくるので、寝室とトイレとの距離をできるだけ近づけておきます。さらに体力が低下したときのことを想定すれば、寝室から玄関のアクセスに無理がないようにしておきたいです。デイサービス利用時の送迎など、介助者の負担の軽減も大切な配慮事項となります。
室内環境に目をむければ、高齢者は、温熱感覚が衰え、体温調節機能が低下するので、寒さに気がつかず体が冷え切ったり、暑さが認識されずに家の中で熱中症となったりしやすいです。特定寝室の温熱環境には最新の注意が必要となります。

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ライフステージに応じた個室のあり方
個室の使用者・占有者は、年齢と共に身体状況が変化し、必要とされる設えも変化していきます。あらかじめ対応するには限界がありますので、状況に応じて改修していくのが現実的であろうと思われます。しかし、水まわりの改修は容易ではないので、水まわりの配置については先を見据えたものとしていきたいです。何を優先するか、どこまで想定しておくのか、建て主様と十分に議論をしておく必要があります。