1.断熱のメカニズム
季節が寒くなってきますと、断熱材をめぐって騒がしくなります。断熱材だけでもたくさん種類があって、どれがよいのか、その断熱材を使っていろんな工法ができているので、さらに迷路は深まります。
ここで落ち着いて断熱材と工法について、おさらいをしていきます。
断熱材のお話しの前に、熱のおさらいからしていきます。
熱は次の3つの方法で伝わります。①伝導、②対流、③輻射の3つです。
この3つの要素を利用すれば暖房器がつくれます。そしてこの3つの要素を断ち切れば断熱材をつくることができます。
①伝 導
物質の中を熱が伝わっていくことを伝導といいます。この物質とはコンクリートのようなこたいだったり、
空気のようなガスだったり水のような液体だったりします。断熱材は熱えを通しにくくさせるものですから、
熱を伝導させにくい物質を利用します。身近なものが空気です。
実は断熱材のほとんどがこの空気を使って断熱性をつくっています。
硬質発泡ウレタンおよび押出法ポリスチレンフォームの一部はフロンガスを利用しています。
フロンガスは空気に比べて熱を1/3しか通さないので断熱材として優れた性能をもっています。
オゾン層問題でフロンが使えなくなり、今では代替フロンに切り替わり、さらには炭酸ガスやペンタンガスなどのノンフロンガスに移行しつつあります。
そして、真空状態では伝導は起こりません。魔法瓶がこの例です。


②対 流
水や空気は暖まると軽くなって上昇し、冷えると下降します。これを対流といいます。この対流現象に乗って熱が移動します。
対流が怖いのは熱が伝導するより早く対流に乗って伝わってしまうことです。
断熱材ではこの対流を少なくするために、できるだけ小さな部屋に空気やガスを閉じ込めています。
繊維状の断熱材は絡んだ小さな空間をつくり、プラスチック系断熱材は微細な発泡体をつくっています。


③輻 射
輻射は熱線によって熱が伝わることをいいます。対面する壁の温度の高い方から低いほうへ熱線が飛びます。
熱線は真空でも、風が吹いていても飛びます。太陽光も輻射熱で、冷たいガラスのそばに寄るとゾクゾク冷気を感じるのも、
自分の身体から輻射熱が飛んでいるからです。
この輻射熱による熱の移動を防ぐには、反射すればよいことになります。アルミは熱線をよく反射するので、
消防士はアルミ色の服を着ています。黒っぽいほど熱線を吸収し、白っぽいほど熱線を反射します。
もう一つ、輻射側での対策もあります。輻射側とは熱線を発する側ですが、おもしろいことにアルミのように反射率の高いものは、輻射率が小さいのです。たとえば、反射率が90%の色は輻射率が10パーセントになります。つまり、飛んできた熱線を反射すれば、熱の伝わりを防ぎますが、輻射する側に使っても10%しか輻射しませんから、同じ効果になります。


熱をおさらいしました。次回の断熱材と断熱工法のおさらいでは、断熱材の種類についておさらいをしようと思います。