高さ寸法の抑え 天井の高さの考え方
先日の設計打ち合わせでもそうでしたが、家を設計するにあたり建て主様が一番きにされること、それは平面プラン。これからの暮らしがそこにすべて投影されるわけですから当然であります。まずは各部屋の配置と各々の位置関係が気になり、その次に部屋の広さも大いに興味の対象になります。建て主様もここまでは設計者と共通言語で話、打ち合わせを進めていけますが、次に部屋の高さ関係の領域になると話はかなり難しくなっていきます。設計事務所の若いスタッフさんたちでも、高さ関係の決定はそう簡単にできるものではありません。ましてや建て主様は今まで高さ寸法なるものを意識して暮らしたことのない方がほとんどであられます。ひかくの対象は今住んでいる家か、ハウスメーカーのモデルルームになってしまう。この難しい高さ寸法の決定をプロたる建築家、設計者に任せられるかどうか。それは機能性や合理性だけでは語れない、空間から導き出される暮らしの心地よさに大きく影響を与えることになります。

しかし設計者のなかにも、住宅を設計していると言いながら、100分の1の平面図・立面図と矩計図(かなばかりず)を描くだけで終わりとしている人がまだまだ多いです。それだけでも家は建てられるけれども、決して質のよい家をつくることはできません。その程度でも家は建てることができると思ったら大間違いで、そんな家ばかりが建ったから日本の住環境は悪くなってしまったのです。

まず、よい設計をする。人によっては個性的ないしは個別性の高い家を造る人もいますが、私たちはできるだけ普遍性の高い家をつくろうとしています。それは平面と断面を同時進行でつくっていく設計です。木組みの美しい、間取りと架構の合一性が設計の本質と考えます。そこから各部屋の高さ寸法を検証していきます。
LDKの高さ寸法、寝室の高さ寸法、和室の高さ寸法など等、それぞれに吟味した寸法を導き出します。
KDKのような大きな居室の中には、複数の天井高を設定します。さらに開口部(窓)の寸法、高さも吟味されます。そうして、心地のいい、落ち着いた、プロポーションの美しい住まいをつくっていきたいと考えています。

その高さ寸法は高さを抑えると暮らしに心地よさと生活するうえでも、便利になります。より少ないエネルギーで温熱環境の質を向上させることもできます。環境負荷を低減できます。なによりも落ち着いた心地よさがあります。「天井を高くする=開放的な空間」と誤解されがちです。居心地のよさは高さ寸法の抑えが大きく影響します。作り手の都合で必要以上に背の高い家をつくっているかもしれません。