ハウスクリエイトで注文住宅をお建ていただく建て主様からも、よくご採用いただく無垢材として、広葉樹の「ナラ材」があります。今日は、日本人なら知っておきたい日本の木材、広葉樹の中でも身近に利用されている「ミズナラ」と「コナラ」をご紹介します。

ナラ類はドングリがなる木で、伐採しても繰り返し芽吹く生命力の強い木です。
では、ミズナラとコナラの違いはなんでしょうか?
家具からエネルギーまで幅広く活躍しているミズナラとコナラの特徴をご紹介します。
ドングリがなる落葉樹、ミズナラとコナラ

「♪〜どんぐりころころ、どんぐりこ~♪」
みなさんも子供の頃、雑木林や公園で夢中になってドングリを拾った思い出があるかと思います。
「ナラ」とは、ドングリがなる木の中でも落葉樹(冬に葉っぱを落とすタイプ)を指します。
ミズナラ(Quercus crispula)とコナラ(Quercus serrata)は、ブナ科コナラ属の木。
他にもコナラ属の仲間には、それぞれ特徴が似ていて違う、クヌギ、カシワ、アベマキなどがあります。ミズナラとコナラは、雑木林などによく生えていて、日本の広葉樹を代表する身近な木のひとつです。
このドングリ、アクを抜いてクッキーなどのお菓子にしたり、焙煎して“どんぐりコーヒー”にすることもあります。保存食にもなるドングリは、東北地方などでは今でも食材として利用されているようです。岩手県ではなんと麺にどんぐりを練り込んだ「どんぐりラーメン」なるものもあるそうです。
森の中で見つけたら、なぜかつい拾ってしまうかわいいどんぐり。ミズナラとコナラは、どんぐり以外にも、その木材も身近に使われています。
木材の王様とも呼ばれる「ミズナラ」の特徴とは

ミズナラは、冷涼な山の中に生える木です。北海道から九州にかけて自生していますが、木材の産地は主に北海道や東北地方です。
関東圏近くだと、軽井沢周辺・浅間山などで見ることができます。
ミズナラの木は寿命が数百年と長く、北海道などの天然林では巨大なミズナラの木を見ることができます。大きく枝葉を広げたミズナラの樹形には、どこかやさしさを感じます。
コナラより葉っぱが大きく、ドングリのサイズも大きめです。
その名の通り、水をたくさん吸い上げるので、ミズナラの木を伐採すると切り株から水が湧いてあふれだすこともあるそうです。
ヨーロッパのミズナラは「オーク材」として家具や内装材に重宝されてきました。木材は重厚感がありますが加工しやすく、狂いが少ないという特徴があるため、好まれている優等生です。
日本では家具文化がなかった頃はあまり利用されず、明治から昭和にかけてはジャパニーズオークとして海外へ輸出されたりしました。
最近では無垢材のフローリング材の部屋が増えたり、テーブルなど家具の部材としての需要もあり、価値が見直されています。
「国産ナラ」と呼ばれる木材の多くは「ミズナラ」のことです。
しいたけ原木やエネルギーになる里山の木・コナラ

コナラはミズナラより木の大きさも葉っぱも小さいのが特徴で、里山によく生えている身近な木です。北海道南部から本州、九州、四国の比較的温暖な地域に分布していて、街中の公園などにもよく植えられています。
コナラは成長が速い木なので、その木材は昔から里山で使われてきました。
特に、火力が強く火持ちが良い「薪」として、また見た目にも美しい「炭」として、エネルギー利用がされてきました。伐採しても繰り返し芽が出て再生してくるので、まさに再生可能エネルギーだったのです。
また、もう一つの身近な使い方としては、シイタケなどのきのこ栽培のための原木(ほだ木)があります。スーパーで出回っているきのこは、おが粉などで育てる菌床栽培がほとんとですが、香り高く味の濃厚な原木栽培のきのこは、高級干しシイタケなどとして今も人気がありますね。
コナラの木材はずっしりと重たく、ミズナラより狂いやすいので、薪やしいたけ原木としての用途がほとんどですが、重厚感を活かした家具に使われることもあります。
ミズナラやコナラの木材としての特徴は

ミズナラとコナラの木材としての特徴を見てみますと、まず共通点としては、どちらもグレーがかった重厚感のある木の色です。また、どちらも「虎斑(とらふ)」という模様が出ます。
これは、ナラ類に特徴的な木の細胞が、柾目に製材した時に模様として現れるものです。柾目に対して垂直に現れる文字通り虎の縞模様のような柄で、キラキラと波打つような不思議な光沢があります。このユニークな木目である虎斑は、家具や内装材にあえて使って意匠にすることがあります。見る角度を変えると表情が変わる、見ていて飽きない自然の造形です。
次にミズナラとコナラの木材としての違いは、重さと狂いやすさです。成長スピードが速いコナラの方が、ミズナラよりも重たい木材になります(広葉樹の中で環孔材という種類は成長が速い方が木材が重たくなる)。
コナラは木材としては、やや狂いやすいですが、再生が速いため燃料やしいたけ原木に使われます。
じっくり育つミズナラの方は、コナラよりも狂いにくく扱いやすいため、家具やフローリングの材料として好まれ、ダーク調の見た目や質感が人気があります。
ウイスキーの樽はナラでできていたんです!

日本酒の香りづけに欠かせないのはスギの樽や桶ですが、海外のお酒はどうでしょうか?
実はウイスキーやワインの樽は、オーク(ナラ)でできています。
ナラの木には独特の香りがあり、また木材が頑丈で樽が水漏れせず長持ちすることから樽の材料に選ばれています。
なんと100年や200年といったナラが樽になるそうです。
蒸留酒であるウイスキーのあの琥珀色は、10年、20年という歳月をかけて樽に使われた木材から染み出すのだそうです。
独特の香りも、まさに木の香り。
樽の中の木を焦がしたり、一度ほかのお酒を造った後の樽を再利用したりして、色々な特徴を持ったウイスキーが醸造されています。
金属の樽では決してできないあのウイスキーの香りや色。
ナラの樽と長い時間が欠かせないとのことです。
国内のウイスキー工場の中には見学できる場所もあるので、お酒が好きな方は、熟成中のオークの樽を見て、試飲で味わってみてはいかがでしょうか?
ちなみに日本では、コナラではなく国産ミズナラ(ジャパニーズオーク)の樽を使って仕込まれているウイスキーもあるそうです。
どんなものか、とても気になります。
ミズナラとコナラの木材の特徴:若返りの「萌芽更新」

このように、色々な形で活躍しているミズナラとコナラの木材ですが、森の中ではどのように成長し再生してきたのでしょうか?
その特徴は「萌芽更新(ぼうがこうしん)」にあります。
ミズナラやコナラの木は、伐採するとそのまま枯れてしまうのではなく、すぐに切り株からたくさんの芽を出してきます。
この芽がふたたび成長して幹となり木になるという、まるで若返るような再生を何度も繰り返すことができます。
とくに20年や30年というサイクルで伐採を繰り返すと、木が常に若々しい状態となり、再生するエネルギーも力強くなるそうです。
萌芽更新されてきたナラの木は、太い幹の途中から何本もの幹が立ち上がる、独特の樹形をしています。
最近まで利用されてきた里山に行くとそんなナラの木に出会えるかもしれませんね。
近年、里山ではナラ類があまり利用されなくなったことでこの萌芽更新のサイクルが滞り、全国的にナラの木が高齢化しています。
そのため、抵抗力の落ちたナラの老木がキクイムシの被害で枯れてしまう「ナラ枯れ」という現象が全国で猛威を振るっています。
これは自然淘汰の一つともいえそうですが、人とナラの木の関係性を考えさせる出来事です。
やはり、森を大切に育て、次の世代へ繋げていきたいと考えます。