ハウスクリエイトでお建ていただいております注文住宅は、すべての柱は無垢の桧です。
近く真壁造りで性能の高い注文住宅が上棟されます。建て主様は、真壁造りと無垢の桧に
こだわられました。
そこで、今回からシリーズで日本人なら知っておきたい、日本の木材をご紹介していこと思います。
その第1回です。

第1回は、日本建築には欠かせない針葉樹「ヒノキ」をご紹介します。
「桧風呂」、「桧舞台」といった利用シーンから高級なイメージのあるヒノキは、戦後に日本国内で多く植林され資源が豊富になったため、より身近な木材になってきています。
ヒノキの生態や用途などの特徴、その木材が私たちの暮らしの中でどのように活躍しているのかをご紹介します。

作家の司馬遼太郎は、著書「この国のかたち」第二巻の最終章「スギ・ヒノキ」の中で、こう述べています。
『 日本建築史は、スギ(杉)とヒノキ(檜)の壮麗な歴史でもある。
スギ・ヒノキは、共通して柾目(木目)がとおって美しい。
また白木の肌が赤ばんで心をなごませ、ともに芳香を放つということでも、用材としての個性は他の木とくらべものにならない。』

『この国のかたち二』(司馬遼太郎、文春文庫・1993年10月9日発行)

『 伊勢には、古代、太陽信仰があったといわれている。
これはあくまでも私的な想像だが、太陽へのおどろきは日ごとの再生にあり、また冬に衰え、春によみがえることも神秘的であったろう。
二十年ごとの遷宮はたぶん太陽を象徴する行事であるかと思えるし、またそれを象徴する材としては、なによりもヒノキであらねばならない。
ナラやカシでは乙女の肌のような若やぎがない。』

『この国のかたち二』(司馬遼太郎、文春文庫・1993年10月9日発行)

このように、ヒノキはその建築用材としての強度のみならず、「乙女の肌のような」美しい特徴ゆえに、昔から神殿には欠かせない木材でした。

日本人の精神を象徴する建物がヒノキでできていることから、ヒノキの木肌は、私たちの心のかち、優しさや生命力を表す木なのかもしれません。

最後の宮大工と言われる宮大工棟梁が絶賛する木材、ヒノキ

日本が誇る世界最古の木造建築物、法隆寺に使われた主な木材もヒノキです。

法隆寺や薬師寺などを手掛けた「最後の宮大工」と言われる西岡常一棟梁が、著書「木のいのち木のこころ」で、ヒノキの木材について絶賛し、日本人とのかかわりの深さを語っています。
『 檜はいい材です。
湿気に強いし、品がいい、香もいい、それでいて細工がしやすい。
法隆寺には千三百年も前の檜がありますが、今でも立派に建っていますし、鉋(かんな)をかけてやりますと、今でもいい香りがしますのや。』

『木のいのち木のこころ<天・地・人>』(西岡常一、小川三夫、塩野米松、新潮文庫・
                                   平成17年8月1日発行)

『 宮大工が木といいましたら檜です。
この檜があったからこそ日本に木造建築が育ち、世界最古の建造物を残すことができましたんや。』

『木のいのち木のこころ<天・地・人>』(西岡常一、小川三夫、塩野米松、新潮文庫・
                                   平成17年8月1日発行)

ヒノキの木材の特徴は、そのまま日本建築の性質と結びついているのかもしれません。

世界のヒノキとその特徴

「ヒノキ」という名前の由来は火を起こす時に使った「火の木」ともいわれ、適度な油分があります。
ヒノキは日本各地に自生する針葉樹で、真っすぐに育つ高木です。
ヒノキ科ヒノキ属の木は世界に6種類あると言われており、その中で日本のヒノキ(Chamaecyparis obtusa)とサワラ(Chamaecyparis pisifera)は日本固有種です。
日本以外では台湾に自生するいわゆる台湾桧=タイワンベニヒノキ[紅檜]( Chamaecyparis formosensis)、タイワンヒノキ[台灣扁柏](Chamaecyparis taiwanensis)が有名で、今も台湾の山奥では2千年クラスの巨木の森を見ることができます。
台湾桧は日本統治時代に輸入され、明治神宮の鳥居などに使われています。
ほか、北米に2種類のヒノキ属が生育しています。
ヒノキの木材は、その香りのよさや白く清潔感のある見た目などの特徴から、近年では日本のみならずアジア圏で人気が出て日本からの輸出も行われています。ヒノキは韓国や中国には自生しておらず、また台湾桧は現在伐採が禁止されていることから、日本のヒノキは世界から求められている貴重な資源といえるかもしれません。

ヒノキは人工林として日本国内で戦後に多く植林され、スギに次いで第二位の植林面積(約260万ha)を誇ります。
耐雪性が高くないので北限は福島県あたりと言われています。
著名な産地としては、天然林では日本三大美林の「木曽桧」(長野県~岐阜県)があり、数百年生の年輪が非常に緻密な木材が、伊勢神宮式年遷宮の用材などに用いられています。
また、人工林では、日本三大人工美林の「尾鷲桧」(三重県)があり、戦後に加工流通ブランドとして確立されたものには「東濃桧」(岐阜県)、「美作桧」(岡山県)、「久万桧」(愛媛県)などがあります。
スギと比べて生育環境や品種による差異が少ないのが特徴で、どの地域に植えても一定の品質に育つ優等生です。
平成26年の素材生産量(収穫された丸太の量)を見てみると、日本全体の生産量239万5千立米のうち、第1位は岡山県で23万5千立米であり、第2位が高知県の22万8千立米、第3位が愛媛県の19万8千立米です。
次いで、熊本県19万5千立米、大分県15万9千立米、岐阜県14万5千立米となっています。
ヒノキ人工林の面積は、第1位が高知県21万7千ha、第2位岐阜県20万9千ha、第3位静岡県14万2千ha(平成24年)となっています。
(林野庁統計情報を参照)

ヒノキ材は、一般的にスギよりも強度があり、見た目は白っぽく、心材がピンク~黄色を帯び芳香が優れているのが特徴です。
柱など住宅の構造材によく使われる他、フローリングや羽目板などの内装材にも使われています。
清潔感があり、神社やお寺などの神聖な空間には欠かせません。
また、昔から大名屋敷やお金持ちの家もすべてヒノキで作る「桧普請(ひのきぶしん)」が重宝されました。
本格的な和室の柱などには、節のないヒノキ材が用いられます。
このように和風建築には欠かせない雰囲気を持つヒノキですが、シンプルな見た目から、ナチュラルな内装や洋室にもよく合います。
節がないものは高級感があり、節があるとより自然で親しみやすい雰囲気になります。
最初は白っぽく見えるヒノキの木材も時間が経つとだんだんと日焼けして黄色っぽく色づいていき、飴色に変化します。
白いキャンバスに絵を描いていくように自由な空間づくりができます。

ヒノキが、大工道具が発達していない昔から使われてきたということは、それだけ加工しやすい木であったということでしょう。
まっすぐ育ち直材が取りやすいことももちろんですが、適度な硬さとやわらかさを兼ね備えていて、割ったり切ったりしやすく、広葉樹などに比べて軽いことも重宝された理由の一つでしょう。
そんなヒノキの特徴や価値が見直され、最近では家具にも使われています。
欧米でその文化が発達した家具の世界では、広葉樹が使われるのが一般的でしたが、手に入りやすい国産木材としてヒノキの家具や学習机などが開発されています。
女性やお年寄りでも持ち運びがしやすい軽さや、そのきわだつ白さで空間を明るくする効果もありそうです。
ヒノキは、ますます私たちの暮らしにとって身近になってきています。

ヒノキは葉や樹皮も使えるのが特徴

ヒノキの葉っぱはうろこ状に小さな葉が集まってできていて、扁平に枝につきます。
葉の裏面の白く見える気孔がアルファベットの「Y」の字に見えることから、よく似たアスナロや
ヒバと見分けることができます。
この葉っぱには精油が含まれており、ヒノキ特有のよい香りがします。
また、抗菌作用もあるとされるので、生鮮食品の下に敷いて使われているのを見たことがある方も多いのではないでしょうか。
最近ではヒノキの葉から抽出したアロマオイルも商品化されています。
また、樹皮は「檜皮葺(ひわだぶき)」として神社仏閣などの屋根の材料に使われています。
生きている高樹齢のヒノキの立木から、専門的な技術を持った職人が皮を丁寧にむいたものが檜皮になります。
何層にも重ねた檜皮葺の屋根は重厚感とやさしさを兼ね備え、雨にしっとり濡れて照り輝く風情も美しいものです。
ヒノキは木材だけでなく、葉や樹皮も色々な形で利用されているのが特徴です。

ヒノキはあこがれと癒しの木材

日本固有種のヒノキは、日本建築の礎である高級木材の代名詞として、そして身近な木材として、
私たちの暮らしの中で様々な形で活躍してきました。
また、その乙女のようなやさしい木肌と香りが触れる人の心を癒し、愛されてきた木材です。
ヒノキと聞いて、あこがれや癒しをイメージする人も多いと思います。
その使い方や関わり方はアイデア次第で無限大とも言えそうです。